経営情報システム:エキスパートシステム・戦略的情報システム(最終更新:2015/12/06 16:33:44 JST)
エキスパートシステム・戦略的情報システム
エキスパートシステム
エキスパートとは言うまでもなく専門家の意味である.経営で意思決定や戦略を決定する際に専門家に助言を求める場合がある.しかし社内に専門家がいない場合はその都度外部からコンサルタントを受けることになる.決定の迅速化,費用の発生,重要情報の保全という点で問題が生じる場合もある.そこで特定の分野の専門家の行う意思決定,判断をコンピュータシステムで代行しようとするものがエキスパートシステムである.このシステムには,いわゆる人工知能の技術が利用される.意思決定支援システムとして位置づけられる.
エキスパートシステムについては,専門の講義が用意されているので詳細はそちらを受講されたい.ここでは概説にとどめる.
エキスパートシステムの構成
エキスパートシステムは,判断や意思決定に用いる知識を格納する知識ベースと,格納された知識を用いて推論するための推論エンジンの2つから構成される.
知識ベース
知識ベースの知識の表現法に関連する用語には次のようなものがある.
- 知識表現
- 定性的表現,定量的表現,手続き的表現,宣言的表現など
- 手続き的知識
- 問題を解決するための手順を記したもの
- 宣言的知識
- 手続きはコンピュータに任せて,問題を解くための条件を記したもの
- 命題論理
- 複数の命題を論理的な接続詞(論理記号)で結びつけたもの.論理記号には,各命題が同時に正しいときのみ全体が正しくなるAND(かつ),いずれかの命題が正しければ全体が正しくなるOR(または),命題の否定のNOT(でない)などがある.
今日は暑い かつ 今日は湿度が高い → 今日が暑くて,湿度が高ければ,命題が正しい(真).一方でも満たさなければ正しくない(偽)
- 述語論理
- 定数,項,述語,限定作用要素などの考え方を導入し,命題論理では十分扱うことができなかった対象も記述できるようにしたもの
- スクリプト
- 時間的変化,時間的な場面の入れ替わりに大して用いられる知識の表現方式
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推論エンジン
推論エンジンに関係する用語には次のようなものがある.
- プロダクションルール
- 推論エンジンで用いられる推論するための処理方法(アルゴリズム)をプロダクションルールという.いわゆるIF~THEN形式(もし~ならば~そうでなければ~)で処理方法を記述する
もし気温が高ければ生ビールを持っていく,そうでなければ熱燗かホットコーヒーを持っていく(甲子園の売り子)
- 帰納的推論
- 多くの具体的な事例から一般的な法則(結論)を導く方法.一般に,具体的な事例が多くあれば,推論結果の信頼性が向上する
Aさんは死ぬ.Bさんは死ぬ.Cさんは死ぬ.よって人間は死ぬ
- 演繹的推論
- 一般的な規則(前提)から具体的な事実を導き,その一般的な規則が妥当であることを示す過程.三段論法が有名
ソクラテスは人間である(大前提),すべての人間は死ぬ(小前提),よってソクラテスは死ぬ(結論)
- 前向き推論
- 知識ベースシステムの推論方式の一種.与えられた条件から結果を推論する方法.演繹的推論を用いて,前提となる推論規則を組み合わせて,新しい推論規則や事実を導き出す
- 後向き推論
- 知識ベースシステムの推論方式の一種.与えられた目標(仮定)の正当性を推論する方法.帰納的推論を用いて,導かれた多くの事実により推論規則の前提条件が正しいことを検証する
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戦略的情報システム
戦略的情報システム(SIS)とは,ある組織の戦略的な行動を支援,促進するために,競争力を優位にするために貢献する情報処理技術,情報の流れに関するしくみを組織内および組織間で総合的,統合的,有機的に組み合わせて展開する,戦略上の機会を作り出すために用いられる情報システムと考えればよい.情報システムを活用して,競争力を高めることができれば,戦略的情報システムとみなすことができる.戦略的情報システムには次の2つのパタンがあるとされている(吉澤,前掲書).
- 意図したSIS
- 経営戦略に連動して,競争優位を獲得あるいは維持するために合理的・分析的な情報システム設計方法論に基づいて構築されたSIS
- 結果としてのSIS
- 経営情報システムの改善を行っている中で,結果としてSISの要件を満たすようになったもの
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