経営情報システム:戦略の選択基準の理論(最終更新:2015/12/06 16:33:44 JST)
戦略を選択するときに,ある戦略を選ぶとどのくらい利益があるかが重要となる.ある戦略を選んだ後に状況が明らかになった時の利益が推定できて,戦略の選び方と状況の組合わせによって,最大の利益が見込まれる戦略が異なるとする.このような場合に,どの戦略を選ぶべきかを決定する方法が必要となる.その決定法には次の4つがある.
選択法の説明にはいる前に準備として利失表について説明する.利失表は行に戦略,列に状況を取り,各マスにある戦略である状況で得られる利益を表す.例えば次のようになる.ここでは下の利失表を例に説明していく.なお各マスに記入する利益は例えば金額でもよいし,何らかの形で換算した数値でもよいが,すべてのマスの単位が揃っている必要がある.
状況:X | 状況:Y | 状況:Z | |
戦略:A | 10 | 5 | 4 |
戦略:B | 8 | 6 | 7 |
戦略:C | 7 | 7 | 7 |
上記の利失表の場合,状況の変化によらず常に他よりも優位な戦略が存在しないため,決定理論により戦略を決定する意義がある.
未来の状態の起こりうる確率(発生確率)が予測できる場合に用いられる.期待値とはそれぞれの戦略ごとに,ある戦略を採用したときに見積もられる利益に発生確率を掛けて,その総和を求めたものである.戦略の選択は,複数ある戦略の中でもっとも期待値が大きなものを選択する.
状況:X | 状況:Y | 状況:Z | ||
発生確率 | 0.5 | 0.3 | 0.2 | 期待値 |
戦略:A | 10 | 5 | 4 | 5.0+1.5+0.8=7.3◎ |
戦略:B | 8 | 6 | 7 | 4.0+1.8+1.4=7.2 |
戦略:C | 7 | 7 | 7 | 3.5+2.1+1.4=7.0 |
例えば,戦略Aの期待値は 10×0.5+5×0.3+4×0.2=7.3 と計算される.
なお,状況ごとの発生確率を等しいと仮定したものは(上の例なら,すべて0.333),ラプラス基準と呼ばれる.
状況:X | 状況:Y | 状況:Z | ||
発生確率 | 1/3 | 1/3 | 1/3 | 期待値 |
戦略:A | 10 | 5 | 4 | (10+5+4)/3=19/3 |
戦略:B | 8 | 6 | 7 | (8+6+7)/3=21/3◎ |
戦略:C | 7 | 7 | 7 | (7+7+7)/3=21/3◎ |
ラプラス基準の場合,各戦略ごとの利失の総和を求めて,一番大きいものを選べばよい.
以下は,発生確率が予測できない場合に用いられる戦略の選択基準である.マクシマックス基準は,いわゆる楽観的な戦略の選択方法である.各戦略ごとに状況ごとの利益を比較し最大値を求める.その最大値を更に戦略間で比較し最大値を求める(最大-最大基準).
状況:X | 状況:Y | 状況:Z | 最大値 | |
戦略:A | 10(Aの最大値) | 5 | 4 | 10(各最大値の最大値) |
戦略:B | 8(Bの最大値) | 6 | 7 | 8 |
戦略:C | 7(Cの最大値) | 7 | 7 | 7 |
マクシミン基準は,いわゆる悲観的な戦略の選択方法である.各戦略ごとに状況ごとの利益を比較し最小値を求める.その最小値を戦略間で比較し,最大値を求める(最小-最大基準).
状況:X | 状況:Y | 状況:Z | 最小値 | |
戦略:A | 10 | 5 | 4(Aの最小値) | 4 |
戦略:B | 8 | 6(Bの最小値) | 7 | 6 |
戦略:C | 7(Cの最小値) | 7 | 7 | 7(各最小値の最大値) |
リグレットとは後悔のことである.つまりある戦略を採用した後に実際の結果がわかったとき,他の一番よい戦略を採用していたときに得られる利益との差を後悔の量と考える.リグレット・ミニマックス基準は,各状況ごとにある戦略を選択したときの後悔の量を求めてリグレットマトリクスを作成し,それをマクシミン(ミニマックス)基準で戦略を決定する方法である.つまり後悔する度合いが一番小さくなるように戦略を決める方式である.なおリグレット・ミニマックス基準はミニマックス後悔基準と呼ばれることもある.
状況:X | 状況:Y | 状況:Z | 状況:Xの後悔 | 状況:Yの後悔 | 状況:Zの後悔 | 後悔の最小値 | |
戦略:A | 10 | 5 | 4 | 0 | -2 | -3(Aの最小値) | -3 |
戦略:B | 8 | 6 | 7 | -2(Bの最小値) | -1 | 0 | -2(各最小値の最大値) |
戦略:C | 7 | 7 | 7 | -3(Cの最小値) | 0 | 0 | -3 |
例えば,状況:Xの後悔は次のようにして求められる.状況:Xの最大利益は戦略:Aを採用したときの10.したがってA,B,Cを選択したときの後悔は,それぞれ順に10-10=0,8-10=-2,7-10=-3となる.
別紙の利失表をもとに,期待値原理,マクシマックス基準,マクシミン基準,リグレット・ミニマックス基準で選択される戦略を求めよ.
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