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主観情報処理研究所

経営情報システム:経営戦略立案に用いられる手法(最終更新:2016/11/18 15:01:33 JST)

経営戦略立案に用いられる手法

経営戦略を立案するためには,自社と自社を取り巻く環境(例えば,市場,競合他社の動向など)を分析する必要がある.いろいろな手法があるが,ここでは以下の手法を取り上げる.

  1. SWOT分析
  2. プロダクトライフサイクル理論
  3. プロダクトポートフォリオマネジメント(ペイオフマトリクス)
  4. 競合分析
  5. マーケティング・ミックス

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SWOT分析

SWOT分析とは,自社の経営環境を外部環境(市場,競合他社,消費者など)と内部環境(社内)の両面から分析する手法である.別名,強み弱み分析とも呼ばれる(吉沢,前掲書).環境の別(外部,内部)と影響(好影響,悪影響)をそれぞれの軸に取り,分析する対象が4つの分類のどこに位置するかを判定して,対象方法を検討する.

SWOT分析のマトリックス
好影響 悪影響
内部環境 強み(Strength) 弱み(Weekness)
外部環境 機会(Opportunity) 脅威(Threat)

2014年へ向けて阪神タイガースを取り巻く状況をSWOT分析してみると次のようになる.

2014阪神タイガースのSWOT分析
好影響 悪影響
内部環境 強み(Strength)
  • 右の強打者の加入(ゴメス)
  • 不在だった抑えの獲得(呉昇桓)
  • 掛布のコーチ加入(未知数ですが…)
弱み(Weekness)
  • FAでの選手獲得の失敗
  • 先発投手不足(スタン,久保流出)
  • 主力の高年齢化&若手の伸び悩み
外部環境 機会(Opportunity)
  • 思いつかん…
脅威(Threat)
  • 巨人のFAでの選手強化
  • 中日フロントへの落合,森の復帰

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プロダクトライフサイクル理論

製品が市場に受け入れられる状況を,導入期,成長期,成熟期,衰退期の4つの段階を経由するライフサイクルとしてとらえる理論である(吉沢,前掲書).各段階の特徴は次のようになる.

導入期
製品の需要は部分的で新しい需要の開拓,購買層の開拓が必要である.開発投資の回収のため,価格は一般的に高くなる.販売対象は所得の高い,富裕者層となる.いわゆる,よいものならお金を出して買ってもよいと考える人たちが対象.
成長期
徐々に市場に浸透して,市場が製品の価値を認識し始める段階.売上は伸びるが,それとともに投資も必要となる.この段階から価格を低価格することができるが,同時に競争が始まり,体力のない企業は淘汰される.
成熟期
需要が最大になり,競争の激化,低価格化が進む.成長期と異なり市場の拡大は終わっているので,競争に敗れた企業の撤退が進む.製品の差別化,市場の細分化などの戦略がとられる.また品質改良などで販売を刺激するような戦略もとられる.
衰退期
どのような製品でも永遠に需要が続くわけではない.需要が減少し,多くの企業が撤退する段階である.撤退の際にできるだけ有利に撤退する戦略として,収穫戦略と売却戦略がある.収穫戦略は売上高をできるだけ維持して,生産,販売コストを引き下げて,徐々に撤退する戦略である.これに対して売却戦略はできるだけ有利な条件で他社に資産を売却し事業から撤退する戦略である.前者が,資産を徐々に回収するのに対し,後者は一時期に回収する点が大きく異なる.

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プロダクトポートフォリオマネジメント(ペイオフマトリクス)

プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)とは,市場の成長性と占有率に基づいて,資源の必要性とその事業の企業への貢献度を分析する手法である(吉沢,前掲書).成長・シェアマトリックスを用いて事業の位置づけを分析する.マトリクスの一方の軸には市場成長率,他方の軸には市場占有率をとる.そして,成長率の高低,占有率の高低の4つの区分を次のように位置づける.

PPMマトリクス
市場成長率:低 市場成長率:高
市場占有率:高 金のなる木(キャッシュカウ) 花形(スター)
市場占有率:低 負け犬(ドッグ) 問題児(トラブルメーカ)

それぞれの分類の位置づけは次のようになる.

金のなる木(キャッシュカウ)
低成長率で高占有率の製品が該当する.安定的な収入を見込める製品である.
花形(スター)
高成長率で高占有率の製品が該当する.資金投入を続けていけば,長期的には成長率が安定し,将来の資金源となる(花形から金のなる木に移行).
問題児(トラブルメーカ)
高成長率で低占有率の製品が該当する.いわゆる市場の流れに乗り遅れた状況である.資金投入により占有率の向上が見込めれば,花形に移行する予備軍となるが,逆に成長率が低下すれば負け犬に転落する危険性も含んでいる.慎重な対応が必要となる.
負け犬(ドッグ)
低成長率で低占有率の製品が該当する.長期停滞製品(事業)であるため,資金的に現状維持が難しいならば撤退を検討する必要がある.

なおプロダクトポートフォリオマネジメントは,2つの特徴により対象を分類比較するペイオフマトリクスの1つの事例とみなせる.つまり軸に市場成長率と市場占有率を用いたものとみなせる.ペイオフマトリクス風に図示すると次のような図として描くこともできる.なおペイオフマトリクスは後の意思決定論の利失表のところで別の意味を表す用語としても使われるので,どちらの意味なのかは全体の内容から適切に判断する必要がある.

吉川の研究テーマのPPMによる分類

図を表示するためにはSVG対応のブラウザを利用してください

プロダクトポートフォリオマネジメントの拡張形として,戦略的事業計画グリッド(ビジネス・スクリーン)という分析方式もある. GE社により発案された戦略的事業計画グリッドは事業戦略の策定,事業計画策定の指針を作成するために利用される.この方法では,市場における自社の事業強度を横軸に,自社で判断するその業種の魅力度を縦軸に取り,その組合わせによって対応策を決定する.

戦略的事業計画グリッド
事業計画の指針 業種の魅力度:低 業種の魅力度:中 業種の魅力度:高
自社事業強度:強 売上の最大化を図る 利益の最大化を図る 規模の拡大を図る
自社事業強度:中 利益の確保を図る 現状に即応する 投資を継続する
自社事業強度:弱 撤退する 継続事業を選別する 選別事業に投資する

ビジネススクリーン 9象限マトリックス(ごろにゃ~の手帳(備忘録))

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競合分析

競合分析とは,企業が同業他社に対して優位であるような状況を作りだすための戦略である(吉沢,前掲書).マイケル・ポーターは著書「競争の戦略」の中で,競争を激化させる構造要因として,「新規参入の脅威」,「既存競争業者間の敵対関係の強さ」,「代替製品からの圧力」,「買い手の交渉力」,「売り手の交渉力」を挙げている.また競争で優位な状況を得るための基本戦略として次の3つを挙げている.

コストリーダシップ戦略
コスト低減を目指し,市場開拓(売り先の拡大)をコスト削減のための源泉とする戦略.
差別化戦略
市場動向にあわせ,顧客にとって価値のある特有な性質を持つ製品やサービスを武器として,競争相手との違いを強調して市場開拓を図る戦略.競合他社との機能,デザイン,サービスなどにわずかな差を設けて,それらを顧客へのメリットとして強調し,競争を有利にする戦略を限界的差別化戦略ということがある.
ニッチ戦略
前出のように,ニッチとはくぼみあるいはすき間,適材適所を意味する.この戦略では企業競争のすき間を狙い,自社の強みである技術や資源を有効に活用し,他社の進出していない特定の市場領域で占有率を高める戦略である.

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マーケティング・ミックス

マーケティング・ミックスはマーケターがターゲット市場から期待する反応を引き出すために用いるマーケティング・ツールの組合せである.そのツールとしては,製品(Product),価格(Price),プロモーション(Promotion),流通(Place)が用いられる.4Pとも呼ばれる.ただしこれは売り手側からのツールの捉え方であり,買い手側から見ると,顧客価値(Customer value),顧客コスト(Customer cost),利便性(Convenience),コミュニケーション(Communication)がそれぞれ先の4Pに対応する形で重要とされる.こちらは4Cとも呼ばれる.

マーケティング・ミックス
売り手:4P 買い手:4C
製品(Product) 顧客価値(Customer value)
価格(Price) 顧客コスト(Customer cost)
流通(Place) 利便性(Convenience)
プロモーション(Promotion) コミュニケーション(Communication)

マーケティング・ミックス(日本マーケティング協会)

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