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主観情報処理研究所

情報システムの分析と設計:代表的なソフトウェア開発モデル(その3)(最終更新:2015/12/06 16:33:44 JST)

代表的なソフトウェア開発モデル(その3)

データ中心アプローチ:DOA(Data Oriented Approach)

DOAとは

データ中心アプローチはDOA(Data Oriented Approach)と略されることが多い.従来の処理(プロセス)を中心にシステムを開発する手法と異なり,データを中心にシステムを開発する手法である.DOAに対する考え方に名前をつけるとすると,プロセス中心アプローチと呼べる(小口・長倉・石川著,ソフトウェア開発ライフサイクル,ITEC,2002).プロセス中心アプローチでは,処理を中心にプログラムが構成される.そのため同じような処理が異なるプログラムに散見したり,同じようなデータベースが処理ごとに作成されていたりすることもある.このことは保守作業を行う場合に作業量の増加をもたらす.

プロセス中心とデータ中心

出典:小口・長倉・石川著,ソフトウェア開発ライフサイクル,ITEC,2002

これに対して,DOAではデータの不変性を利用した設計手法ということができる(小口・長倉・石川著,ソフトウェア開発ライフサイクル,ITEC,2002).データに影響を及ぼすということは,何らかのアクションにより,データが発生する,更新される,消滅するの3通りだけであって,何らかのアクション以外の処理の順序や処理の内容に変更があっても,データには影響がない.このことをデータの不変性と呼んでいる.このデータの不変性を利用すれば,各データごとにそれに影響を与えるアクション,すなわち処理を組にして外界から隔離できる.つまりシステムで同様のデータは一つだけ定義し,そのデータにアクションを与えるときは必ずそれに付随する処理を呼び出す.このようなしくみはカプセル化と呼ばれる.

DOAの手順

DOAの手順は次の図のようになる.システム開発工程の設計に対する工程が,データ標準化,標準プロセス設計,カプセル化,プログラム設計に細分化されていることがわかる.そのため全体業務のデータを対象にしてから,必要となる業務のプログラムを設計することになる.

DOAの手順

出典:小口・長倉・石川著,ソフトウェア開発ライフサイクル,ITEC,2002

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オブジェクト指向モデル

オブジェクト指向とは

オブジェクト指向については,後に詳しく取り上げるためにここでは概説にとどめる.オブジェクト指向とは,人間の実世界のモノとモノの関係をコンピュータプログラムに活用する考え方である.DOAではデータの不変性をコンピュータに反映したが,オブジェクト指向では,データだけでなく,モノとモノの関係を含めた実世界の現象すべてをコンピュータに反映し利用しようとするものである(出典:小口・長倉・石川著,ソフトウェア開発ライフサイクル,ITEC,2002).

オブジェクトとは

オブジェクト指向では実世界に存在するものを実体(エンティティ)と呼ぶ.そしてオブジェクト指向モデルにおけるすべての実体をオブジェクトと呼ぶ(小口・長倉・石川著,ソフトウェア開発ライフサイクル,ITEC,2002).例えば,車,犬,猫などはすべてオブジェクトである.これらのオブジェクトには性質を表すプロパティが定義されている.例えば,車の形,色,サイズなどである.またこれらのオブジェクトには動作が備わっている.例えば,「車は走る」,「犬は鳴く」,「猫は寝る」などである.これらの動作をメソッドと呼ぶ.プロパティとメソッドを組としたものがカプセル化である.オブジェクトのデータに相当するプロパティにアクセスするためには,専用のメソッドを利用する必要がある.このカプセル化により,オブジェクトの独立性・安全性が高まることに加え,部品としての再利用化が容易になる.詳しくは先の章に譲る.

オブジェクト指向モデルの手順

オブジェクト指向モデルの手順は下図のようになる.基本的な流れはウォータフォールモデルと同じであるが,ウォータフォールモデルに比べて,各工程の区別が難しいこと,それぞれの工程を行き来するラウンドトリップにより開発する点が異なる(小口・長倉・石川著,ソフトウェア開発ライフサイクル,ITEC,2002).

オブジェクト指向モデルによる開発手順

出典:小口・長倉・石川著,ソフトウェア開発ライフサイクル,ITEC,2002

オブジェクト指向モデルの種類

UMLとして統一されるまでは,多くの手法が存在していた.後のUMLの章に詳細は譲るが,次のような手法が比較的完成度が高いとされている.

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