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主観情報処理研究所

情報システムの分析と設計:代表的なソフトウェア開発モデル(その2)(最終更新:2015/12/06 16:33:44 JST)

代表的なソフトウェア開発モデル(その2)

プロトタイプモデル

プロトタイプモデルとは

プロトタイプモデルとは,目的とするシステムを開発するために,その一部を試作品(プロトタイプ)として開発して,それらをユーザに評価してもらいながら,システムを開発する手法である(小口・長倉・石川著,ソフトウェア開発ライフサイクル,ITEC,2002).プロトタイプを作成することをプロトタイピングといい,プロトタイピングによりシステムを作るためのモデルがプロトタイプモデルである.

プロトタイプモデルの特徴

ユーザの要求を早い段階,試作品の段階で確認することができるため,要求が実現可能か否かを判断することが可能となる.特に不確定な要素を確定する作業であるとも言える(小口・長倉・石川著,ソフトウェア開発ライフサイクル,ITEC,2002).前出のウォータフォールモデルでは,分析工程以降で発生した仕様変更に対処するためには,再度分析工程に戻って作業しなおす必要があった.これに対して,プロトタイプモデルでは,仕様変更が生じることを前提としているので,仕様変更に対処しながら開発を行うことができる.プロトタイプモデルは,分析工程~設計工程~プログラミング工程で利用されることが多い.

プロトタイプの分類

プロトタイプはその目的と方法により,次のように分類される(小口・長倉・石川著,ソフトウェア開発ライフサイクル,ITEC,2002).

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RAD(Rapid Application Development)モデル

RADモデルとは

RADモデルとは,文字通り,早く,安く,高品質なシステムを開発することを目的としたモデルである.特徴としては,エンドユーザの参画による開発,開発期間の厳守,統合化CASEツールを活用したプロトタイピングによる開発などが挙げられる(小口・長倉・石川著,ソフトウェア開発ライフサイクル,ITEC,2002).

RADモデルの手法

RADモデルは次の4つの手法から構成されている(小口・長倉・石川著,ソフトウェア開発ライフサイクル,ITEC,2002).

  1. JRP(Joint Requirement Planning)・JAD(Joint Application Design):分析工程や設計工程にエンドユーザが必ず参画し,要件定義を明確にする
  2. タイムボックス:開発期間を限定し,その期間内で必ず開発を完了させる.このタイムボックスで開発した単位を積み上げて開発する
  3. SWAT(Skilled With Adavanced Tools)チーム:業務分析,設計ができ,CASEツールを熟知している数名から構成されたチームにより業務開発を行う.ユーザの要件を的確にシステム化できることが期待できる
  4. CASE(Computer Aided Software Engineering)ツールコンピュータを活用することで,ソフトウェアを工学的に作るためのツール.職人芸としてのソフトウェアの開発ではなく,科学技術を取り入れた合理的なソフトウェア開発手法の一つといえる

RADモデルの適用範囲

ウォータフォールモデルは大規模システムから小規模システムまで適用できるのに対し,RADモデルは中規模から小規模システムの開発に適している.前出のプロトタイプモデルを最適に利用できるように,体制や工程の見直しを行ったモデルと考えればよい(小口・長倉・石川著,ソフトウェア開発ライフサイクル,ITEC,2002).

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スパイラルモデル

スパイラルモデルとは

スパイラルモデルとはベームが提唱した開発方法論である.次の4つの工程を渦を巻くように進めていく,すなわち繰り返し行っていく(小口・長倉・石川著,ソフトウェア開発ライフサイクル,ITEC,2002).

  1. 目的・代替案・制約の設定
  2. リスクの明確化と解消
  3. 製品の開発と検証
  4. 次サイクルの計画立案

スパイラルモデル

出典:小口・長倉・石川著,ソフトウェア開発ライフサイクル,ITEC,2002

スパイラルモデルの特徴

スパイラルモデルはリスク解消アプローチとも言える(小口・長倉・石川著,ソフトウェア開発ライフサイクル,ITEC,2002).対象システムを独立性の高い,いくつかの部分に分割して部分ごとに開発を繰り返す.そのときに,プロトタイプ,シミュレーション,性能評価を行い,リスク発生原因の追究を行う.リスクが潜在化している未知の分野のシステム開発に適用されることが多く,プロトタイプモデルの拡張版と考えられる(小口・長倉・石川著,ソフトウェア開発ライフサイクル,ITEC,2002).

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