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主観情報処理研究所

情報システムの分析と設計:UMLの基礎(最終更新:2015/12/06 16:33:44 JST)

UMLの基礎

UMLとはUnified Modeling Languageの略で,オブジェクト指向分析・設計を表現するためのビジュアル言語である.ここではまずその基本について解説する.

この章の内容

  1. UMLとは
  2. UMLによる分析設計
  3. 5つのビュー
  4. UMLで用いる図
  5. 4つの開発モデルとUMLの関係
  6. UMLと従来の開発手法の関係

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UMLとは

1990年代,オブジェクト指向分析・設計には数多くの方法論が提案されていた.有力な手法としては以下の3種が有名.

  1. Booch法:Boochにより提案された手法
  2. OMT:Rumbaughにより提案された手法
  3. OOSE:Jacobsonにより提案された手法

問題点:同じ内容を表現しているのに記法が異なるため,設計者が混乱する.UMLに記法を統合することで解消.

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UMLによる分析設計

現在,オブジェクト指向分析設計の標準としてUMLが使用されている.UMLの主な特徴は次の3点が挙げられる(山田著,UMLワークブック,2003).

問題領域の理解の一助
図を利用することで,分析対象となる問題領域の事象を整理できるため,理解が容易になる
設計者・ユーザ間のコミュニケーションの円滑化
統一的な文法を持つ言語を利用することで情報交換を円滑化できる
システム仕様の決定
従来のメジャーな手法にはユーザ視点あるいはビジネス視点に関する規定がなかったことを解消している

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5つのビュー

システム開発にはいろいろな立場の人が関係する.立場が異なればシステムに対する視点(見方)も異なってくる.システムに関する視点を5つのビューにまとめることができる(山田著,UMLワークブック,2003).

ユースケースビュー
ユーザや外部システムによって実行されるシステムの振る舞いに焦点を合わせる.システムが「何を行うのか」を表現
設計ビュー
システムの振る舞いの「どのように行うのか」に焦点を合わせる.
プロセスビュー
システムの並行性や同期に焦点を合わせる.
実装ビュー
必要な開発部品やソースファイルに焦点を合わせる.
配置ビュー
ハードウェアの配置に焦点を合わせる

5つのビューはそれぞれ単独で完結しているため,自分の関心のあるビューに焦点を合わせることができる.

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UMLの図

UMLで使用される図の名称は次の通り.

UML1.xの各図
構造図
(Structural Diagrams)
クラス図 (Class Diagrams) パッケージ図 (Package Diagrams)
オブジェクト図 (Object Diagrams)
コンポーネント図 (Component Diagrams)
配置図 (Deployment Diagrams)
振る舞い図
(Behavioral Diagrams)
ユースケース図 (Use Case Diagrams)
相互作用図
(Interaction Diagrams)
シーケンス図 (Sequence Diagrams)
コラボレーション図 (Collaboration Diagrams)
ステートチャート図 (Statechart Diagrams)
アクティビティ図 (Activity Diagrams)
UML 2.0の図
構造図
(Structural Diagrams)
クラス図
(Class Diagrams)
オブジェクト図 (Object Diagrams)  
パッケージ図 (Package Diagrams)  
複合構造図 (Composite Structure Diagram) 新規
コンポーネント図 (Component Diagrams)  
配置図 (Deployment Diagrams)  
振る舞い図
(Behavioral Diagrams)
ユースケース図 (Use Case Diagrams)  
相互作用図
(Interaction Diagrams)
シーケンス図 (Sequence Diagrams)  
コミュニケーション図 (Communication Diagrams) コラボレーション図 (Collaboration Diagrams) から名称変更
インタラクション・オーバービュー図 (Interaction Overview Diagrams) 新規
タイミング図 (Timing Diagram) 新規
ステートチャート図 (Statechart Diagrams)  
アクティビティ図 (Activity Diagrams)  

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4つの開発モデルとUMLの関係(教科書15ページ)

システム開発のモデルは4つのフェーズに分けることができる.各フェーズでそれぞれ次のようなUMLの各図が用いられる.

要求モデリング
ユーザのシステムに対する要求内容を把握.ユースケース図
分析モデリング
システム化範囲の構造を明確化.「何を実現するか」に主眼.
静的な振る舞い:クラス図,動的な振る舞い:コミュニケーション図,シーケンス図,ステートマシン図,アクティビティ図
設計モデリング
システムの実現方法を定義.「どのように実現するか」に主眼.
静的な振る舞い:クラス図,動的な振る舞い:コミュニケーション図,シーケンス図,ステートマシン図,アクティビティ図
実装モデリング
実際に動作するシステムの構成要素を定義.コンポーネント図,配置図

UMLにいろいろな図が用意されているので,システムを異なる視点で表現することが可能であるのに加え,オブジェクト指向にも対応している.さらに文法が統一されているので,開発者,ユーザ間での内容理解の助けとなる.

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UMLと従来の開発手法の関係(教科書16ページ)

既出のDFDやER図に相当するUMLの図は次のようになる.

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