情報システムの分析と設計:E-R分析(最終更新:2015/12/06 16:33:44 JST)
E-R分析はデータ分析の手法であり,概念データモデル(E-Rモデル)を作成がメインとなる.トップダウンアプローチによるE-R分析は,理想形であるあるべき姿を描くものである.それに対して,ボトムアップアプローチによるE-R分析は,現実的な姿をモデルとして記述する(小口・長倉・石川著,ソフトウェア開発ライフサイクル,ITEC,2002).
この章の内容
E-Rモデル(Entity Relationship modelは1976年にP. P. Chenにより提唱された(小口・長倉・石川著,ソフトウェア開発ライフサイクル,ITEC,2002).E-R図(Entity Relationship Diagram)を用いて,実体(エンティティ:entity)の関連(relationship)が図式化される.実世界をデータモデルによって表現することによって,分析,設計の結果を視覚的に確認できる点が特徴である.
E-R図は,「エンティティタイプとインスタンス」,エンティティ識別子,「リレーションタイプとインスタンス」,カーディナリティから構成される.
エンティティタイプは実体型とも言われる.エンティティはデータ属性(attribute)を持つ.またデータ属性はある特定の値を持つ.この特定の値はインスタンス(insatance)と呼ばれる.エンティティの実現値とみなせる.エンティティタイプはエンティティの実現値,つまりインスタンスの集合である.
エンティティ=学生,データ属性=名前,住所,年齢,インスタンス=山田,千代田区,30歳
エンティティ=科目,データ属性=科目名,開講時限,インスタンス=数学,5時限
エンティティのオカレンス(インスタンス)を識別するためのデータ属性.主キーと呼ぶ.この主キーにより各インスタンスは一意に定まる(明確に区別できる).E-R図中では下線により示される.
「学生」エンティティの主キー=「学生番号」.氏名は同姓同名がいた場合,区別できないので主キーとしては不可.
処理の規則(ビジネスルール)により発生するエンティティ間の関係をリレーション(関連)という.エンティティ間の関連の実現値もインスタンスといい,このインスタンスの集合をリレーションタイプと呼ぶ.
「学生」エンティティと「科目」エンティティの関連=成績,インスタンス=90点
カーディナリティ(cardinality)はエンティティのインスタンス間の対応関係を表す.1対1,1対多,多対多がある.チェンの記法ではリレーションタイプの両側に取りうるインスタンスの数を表す.
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